前回までEMS(Electronics Manufacturing
Service)のことを触れたので、
今回はついでと言っては何ですが、EMSの利用例を紹介しようと思います。
まだまだ日本では多くの人がEMSのことを知らない人が多いと思いますし、
更にどういう風に利用する事が出来るのか、また、他社がどのように利用しているのか
を知る機会は余り無いと思いますので。
1.基板実装のみをさせる
1)部品は無償支給する
2)部品の調達も任せる
このケースが日本のメーカーのEMS利用で一番多いパターンです。
回路設計、実装設計、部品設計、部品メーカー指定、と設計に関することは全て
自社で完了し、実装部分だけをEMSに任せます。
部品メーカーの選定も済んでいますので、後は部品調達ルートをどうするか決めれば
良いわけです。
但し、日本メーカーの場合は、日本メーカーの部品を使うことが多いですし、
調達ルートも長年つきあいのある部品商社やその地域担当の営業所の場合が多い
ので、そこからの調達を変更することが出来なかったり、海外への販売が
出来なかったり、EMSへの取引価格の適用が出来ない等の問題が発生します。
結局、無償にせよ有償にせよ、部品調達に関してEMSの強みを生かすことはあまり
出来ません。
また、設計も終了していますので、設計変更によるVACDも余り行われません。
2.設計段階からEMSにまかせ、部品調達もEMSの強みを生かす
回路設計(論理設計)と最終製品のデザインはメーカー側で行い、PWBのサイズや
重要部品(CPU等)を除いた一般部品はEMSに部品の選定から調達までを
任せます。
設計部隊を持つEMSでは、実装後の電気的な影響を加味し、かつ、量産時の実装
歩留まりの影響を考慮した設計が可能です。
また、世界的に量産工場を持ち、
グローバルな調達体制を構築しているEMSでは、
各部品種類毎の専門チームを持ち、各工場での最適な購入メーカーを選択し、
そのモデルの部品表(BOM=Bill of Material)に登録します。
そして、発注メーカー側とEMSで最も安値で性能の良い部品を選定することで、
最終的な部品表(BOM)を完成させます。
発注メーカー側では、設計リソースを削減でき、かつ、EMSの部品調達力を生かし、
部品コストを削減することが可能になります。
このケースは、日本企業でも設計リソースに限界があり、製品のサイクルが
短い企業では、採用している場合が有ります。
また、量産試作前までの何回かの試作を、日本国内工場で行い、そのEMSの
海外工場へ量産移管するサービスもあります。これが、きちんと出来るEMSは
限られています。発注メーカー側では、地元の協力業者に試作をさせている場合が
多いですが、量産時に別のEMSに移管するよりも、試作の初期段階から同じ
EMSに任せることで、より量産への移管がスムースに進む利点があります。
3.最終製品の設計までEMSに任せる
基本設計や製品コンセプトのみを提示し、基板設計、部品選定(設計)、
最終製品の設計までをEMSに任せます。
この場合、EMSでなくODM(Original Design Manufacture)と呼ばれる場合も
あります。こうした最終設計までができるEMS(ODM)は限られていますし、
得意とする製品分野が決まっている場合が多いので、注意が必要です。
ただ、EMS企業も多くは元々他のメーカーの設計・生産工場だった場合もあるので、
所望の製品開発力のあるEMSを探すことが出来れば、メリットが出てきます。
日本企業でも、例えば
携帯電話やPCではODMを利用している企業が以前から
有ります。
4.最終製品の修理、アフターサービスまでをEMSに任せる
最終製品を販売した後の、顧客からの返品された不良品の修理は、
メーカーとしては頭の痛い問題の一つです。
これをEMSの持つ、修理やアフターサービスの機能を利用することで、
修理用部品の調達・管理、顧客からの修理品の受け取り〜解析〜返納までの
負担を軽減します。
元々、量産をEMSが行っている訳ですから、製品に関する知識もありますし、
修理までを担当することに何ら無理はありません。
但し、その場合、不良の切り分け、不良原因の調査、不良レベル別の製品の処理等、
最初の段階で取り決めを確実に行っておく必要があります。
ここまで一貫してEMSを利用しているケースはまだ少ないです。
5.グローバルでの生産品目を纏めて大手EMS一社に発注する
これはグローバル企業がEMSに大量発注することで、徹底的なコストダウンを行い、
EMSの持つグローバルなサプライチェーンを最大限に生かそうとする
やり方です。
内容は様々ですが、基板設計を含み基板実装から、製品によっては最終製品
組み立てまで、更に修理までを任せる場合もあります。
年間発注量は100億円を優に超えますので、大抵の場合、トップ同士の商談となります。 EMS側は最優先顧客として、グローバルなその顧客専門の組織を作り、
顧客からのあらゆる要求に応えるよう努力します。
日本の企業で、こうした取り組みを行う企業は聞いたことがありません。
大抵の場合、製品毎でしかも複数のEMSから調達するので、EMSから見ると
取引金額が少なくなるので、どうしても対応方法・組織にも限界が出てきます。
日本の製造業は、もの作りへの拘りを持ち続けている企業が多いですし、
そこから利益を生み出すことで、企業規模を拡大してきた企業が多いので、
まだEMSのメリットを最大限に利用するという発想自体がまだ出て来ないのでは
と思います。
結局、どこまでEMSを利用するのかのコンセプトを明確にし、その目的に最適なEMSを
選び、深くつきあうことが重要と思います。